SPECIAL TALK スペシャル対談

働き方改革とこれからの販売促進

対談企業紹介

COMPANY

株式会社プリンター
1969年(昭和44年)設立。本社/名古屋市守山区。チラシの制作・印刷からホームページ・クロスメディアまで、多種多様な顧客の課題を解決する印刷会社。特にチラシ作りにおいては、その実績・ノウハウ・機材・スタッフの経験とスキルによる一貫した制作体制で多くの顧客に支持されている。
http://www.printer.co.jp/

PROFILE

代表取締役 松岡祐司
1958年生まれ。京都産業大学を卒業後、伊奈工芸印刷を経て、1982年アサヒ商事株式会社アサヒプリントセンター(現:株式会社アサプリ)に入社。1995年代表取締役に就任。2002年株式会社プリンターをM&A、代表取締役社長に就任。マーケティング、プランニング、印刷を中心にアサプリグループ9社を展開中。その経営手腕に中小企業経営者からの相談多数。2017年より盛和塾三重代表世話人。

SESSION 01 (株)プリンター 
代表取締役 松岡祐司さんに聞く

池田:
プリンターさんにはチラシ制作から販売促進に関するご提案まで、いつも大変お世話になっております。本日はよろしくお願いします。
松岡(敬称略):
今回は、お声掛けいただきありがとうございます。私どもを単なる一業者でなく、パートナーと思って頂いていると感じとても嬉しく思います。
池田:
昨年来社いただいた時に、プリンターさんが取り組まれている働き方改革の話を聞いて共感する部分が数多くありました。今日はさらに詳しい話が聞ければと思います。取り組まれるきっかけは何かあったのでしょうか。
松岡:
何のための働き方改革か、プリンター含めアサプリグループ共通の理念は「全社員の幸せを追求する」で、そこが全ての出発点です。印刷は受注ありきで納期がある、計画生産できない特性から長時間労働になりやすい業界です。特に、責任感が強くて仕事ができる人が遅くなってしまう。全員が幸せになるためには、負荷がかかっている人の仕事を分散し皆が早く終れるようにと考えました。そのために進めたのが “業務の見える化”です。
池田:
「全社員の幸せを追求する」ための働き方改革という明確な目的があったわけですね。“業務の見える化”とはどのようなものですか。
松岡:
会計の見える化は9年前から始めていて、原価、経費、人件費、全てをデータ管理し、リアルタイムに一人あたりの利益(付加価値)を全社員にオープンにしています。そうすることで自ずと時間当たりの生産性を意識するようになります。大事なのは、一人あたり時間あたりの付加価値を上げること。みんな早く帰って、お客様の満足や売上が下がったら本末転倒ですから。
そして目標利益を超えたら、毎月出た利益を報奨金として皆に還元しました。社員一人1万円、パートアルバイトに5千円、新卒も部長もみな同じです。全員の幸せのために、全員が協力して実現できるように。
池田:
自分の付加価値(粗利益)がリアルタイムで見えるというのは凄い仕組みですね。それを皆が意識するように報奨制度と合わせて。残業時間短縮にはどのように繋がるのでしょうか?

SESSION 02 残業が多い人を責めるのではなく、偏りを是正する。

松岡:
利益確保の道筋が見えたところで、2年前の経営計画の目玉に残業時間削減を掲げました。長時間労働が常態化すると、いい人を採用できない、定着もしない、責任感が強い人にしわ寄せが出る。これは仕組みで変えていこうと。

以前は100時間くらい残業している人もいました。残業代が生活給になっている現実もあります。そこで、利益目標を達成した上で対前年の残業時間を10%削減できたら報奨金1万円、両方達成すれば毎月2万円の報奨金を全員に出すことにしました。
池田:
残業時間削減にも全員対象の報奨制度を導入されたのですね。一人あたりの付加価値に、時間の概念も加えたわけですね。
松岡:
はい。パソコン立ち上げると自分の当月の残業時間が表示されます。そして社員証の緑のストラップが、40時間超えると黄色、50時間超えると赤、60時間超えると黒に変わります。各部門長は部下の残業時間を見て、黄色の人がいたら、その人を責めるのではなく偏りを是正する。デザイナーは特に仕事を抱えがちですから。4万円分の製作費の内、地図部分を他の人に任せたら、地図製作分の金額は任せた人の数字になるわけです。
池田:
今月はまだ赤が少ないなとか、黒いストラップの人の仕事を皆でサポートするわけですか。アナログですが一目瞭然ですね。数字の案分もそこまで細かくやられるのですね。
松岡:
助けた分が自分の売上にも加算されていくので、手伝う方のモチベーションにもなります。何よりも社員全員が、お客様に喜んでもらって利益目標達成して早く帰ろう、という目的を共有できていることが大きいと思います。
池田:
付加価値や顧客満足度を下げずに、時間効率を上げるわけですね。結果はいかがでしかた?
松岡:
取組みを始めた最初の1年で15%削減、売上も付加価値も伸びて、2年目も10%削減できそうです。平均残業時間は40時間以下になってきました。残業代の削減分は、社員の年収を見ていますので昇給で対応します。年収が下がると社員のローンの返済などに影響しますから。賞与で還元するなど年収が下がらないように配慮しています。
池田:
残業が多い人を責めずに仕組みでクリアすることで、そこまで改善するとは驚きです。イケダヤの場合、残業はほとんどないのですが、毎月8日休みでも熱心な従業員は6日休みでやりくりする人もいます。最近は休日を気にする方が多いので、出来ない理由を考えて仕組みから変えていこうと話しています。デジタル化までは出来ていませんが、特定の人に仕事が集中しないようにバランスをとっていますが、今後はデジタル化も考えたいと思います。

改革を進めて社員のモチベーションはいかがでしたか?

SESSION 03 自分の子どもや友人に薦める会社でありたい

松岡:
最初は辞める人や時間を入れない人もいました。じっくり仕事したい人にとっては難しいのかもしれません。でも出発点は「全社員の幸せを追求する」、だからギスギスしません。経営計画書にはこう書いています。「同地区同業他社の中で時間当たりの賃金を10%以上高い金額にしよう」と。例えば営業部長で年収480万円の人がいたら、うちは530万。それを社員と握ります。私たちは、目的、目標を共有することを“握る”と言っています。目的はただ一つ。周りの印刷会社が全部潰れても、勝ち残る、お前らの給料は俺が保証すると。絶対に潰さない、クビにしない。それをいつも言っています。

イケダヤさんが何か具体的に取り組んでいるものはありますか。
池田:
求人難から3年程前にママパートという部隊を作りました。平日の昼間など、子育て中のママが働きやすい時間帯で採用し業務を回せる仕組みにしようと。ある店では2名の募集に対して20名以上の応募がありました。優秀な人が多く会社の空気も少し変わり、今までと違う視点から良い結果も生まれ、地域で働く人に合わせた職場を考えていくのも私達の役目だと思っています。お蔭様で、小売業で人材がいなくて困っているという中、長く勤める方が多く、辞めても友達を紹介してくれたり、人に関して恵まれています。とても嬉しいことです。
松岡:
それは、そういう風土をイケダヤさんが創っておられるのだと思います。友達に紹介したい、子どもにも薦めたいとイケダヤさんに人が集まってくるのは素晴らしいことです。私は、最高のCSR(企業の社会的責任)は、「自分の子どもや友達が入る会社にすること」と言っています。家族や友人に、自分の勤め先は地域になくてはならない会社と胸張って言いたいですよね。

SESSION 04 チラシ、スマホ、LINE@、入り口は多い方がいい。
でも正解はない。

池田:
ありがとうございます。これからもそうあり続けたいと思います。
話しは変わりますが、今イケダヤでは、これまでチラシ中心でやってきた販売促進を見直しているところです。LINE@の導入を進めて2年、会員数は1万5000人になりました。まだまだ模索中ですが、松岡社長は今後の販売促進のあり方をどうお考えですか?
松岡:
私たちは印刷業を生業にしていますが、印刷だけやっていると売上は年率10%下がっていきます。特にここ10年は、スマートフォン、インターネットの普及で大きく変わりました。今はスマホありきの時代ですが、それでもチラシは必要で、新規や年配の方を取り込むためには欠かせません。チラシの誌面は分かりやすくて訴求力があり、スマホで配信し拡散するのも有効です。入口は多い方がいいので、QRもARもあった方がいいでしょう。
これからは、印刷部数を削ってもデジタル化は必要です。印刷会社が言うことではないかもしれませんが、私どもはお客様の商売繁盛が一番ですから。

イケダヤさんは早くから取り組まれているので、同業他社よりも抜き出ていて、これは強みだと思います。ただ今後もずっとLINEかというと誰にも分からないのがこの世界です。私はインスタグラムができた時から息子に教えて貰ってやっていますが、自分が実際に使ったり、ターゲットとなる消費者が実際にどうやって情報収集しているか直接話を聞いたり、現場で起こっていることをリアルに把握することが大事だと思います。

正解がなく、どの会社も試行錯誤を続けているのが現実です。プリンターには販売促進に関する多くの成功事例が集まってくるので是非参考にしてください。
池田:
そうですね。Webでの販促強化は今後の肝になっていくと思います。プリンターさんからのアドバイスは本当に参考になるので、今後も頼りにしています。
最後に、松岡社長の好きな言葉、モットーを教えていただけますか?
松岡:
「やってやれないことはない。やらずにできるわけがない。」これが私のモットーです。熱い思いと高い志を持って果敢にチャレンジをしていくこと。そして、私と知り合っていただいた方、縁があって一緒に働いてくれている社員やお客様、皆が良くなることで、「松岡と一緒に仕事してよかったな」と思う人が何人いるか。それが、僕が棺桶に入る時の足跡かなと思っています。家族も社員もお客様も仕入れ先も、皆が幸せになってくれることをいつも願っています。それが自分の幸せにも繋がりますから。
池田:
これからも良きパートナーとして、よろしくお願いします。
本日はいい話を聞かせていただき本当にありがとうございました。
松岡:
こちらこそありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。